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高校生に勧めたい「ソ連後」を描いた作品 3選

 

 ロシアのウクライナ侵攻の可能性が高まりつつある今日この頃。

 

 ここ30年間、国際紛争は「アメリカVSイラク」「アメリカVSテロ」「アメリカVSタリバン」といった、言ってしまえば「アリと巨人の戦い」の図式が繰り返されたけど、今回は久しぶりに「西側VS東側」の観点で語られていますね。

 

 この「西側」や「東側」とか、「資本主義VS社会主義」って、今の若い人はわかるのかな?

 なんせいまだに「共産主義」を掲げて「イデオロギー国家」のはずの中国が、資本主義をも凌駕するマネーの乱発っぷりを発揮!

 まさか「共産党」が資本主義を取り入れて進化してしまうとは思わなかった。

 結果、イデオロギーの理想は「一党独裁」という形で統治の面だけで残り、「共産党」が資本主義よりもえげつないマネーのバラマキをあからさまに行う。その圧倒的なマネーの前に資本主義が屈してしまう。

 30年前に勝利したはずの資本主義が、21世紀においてマネーで共産主義に敗れるという、皮肉な結果になっています。 

 

 日本政府・企業が一生懸命、チャイナマネーに三跪九叩頭の礼を取っている中で生まれ育った若者には、かつての冷戦の図式がわかるのだろうか?

 

 1980年代まで、世界は確かに「西と東」に分かれていた。

 

 あの時は本気で、ソ連を中心とした東側国家を恐れていたからね。

 

 ただそれも多くはアメリカとソ連プロパガンダ合戦の結果だったんだけどね。

 お互いに自分の軍を誇る一方、相手の軍の強力さを叫んで一般人の恐怖心をあおっていた。そして互いに「明日にでも核が発射されるんじゃないか」とビビっていた。

 アメリカなんてソ連に対抗するために「スターウォーズ計画」なんてものをぶち上げていた。

 要はソ連核兵器を発射したら、宇宙衛星からミサイルを発射して撃ち落とす、ってもの。そのイメージアニメがNHKの「ニュース9」でも放送されていたのだけど、なんとレーザービームでミサイルを攻撃しているじゃないか!

 まさにスターウォーズ!!

 

 ・・・・いまだにレーザービームは実現せず、建物を透視するというスパイ技術もどうなったのやらとおもっていたら、日本で女性の下着を「透撮」するのに生かされているらしい。日本って、そういうことでは世界をリードしているよね。

 

 でもね、そんなSFみたいなことを、政府がアホ真面目に発表し、NHKの解説員もアホ真面目に解説し、一般人もアホ真面目に「アメリカって、すげー!!」って言ってた。

 

 で、冷戦が終結した後、ソ連の実態がわかるにつれ、西側は拍子抜けしてしまった。だって、真空管で戦闘機を飛ばしていたんだっていうんだもの。

 

 ソ連が無くなって、一方の側の「縛り」が無くなった世界では、その後、各地で小規模な紛争が相次いだ。ソ連内部や東欧諸国、アジアでも起こった。

 

 どれも「世界を揺るがす」なんてことには程遠い、ローカルな紛争なんだけど、ソ連がなくなって馬鹿力のもっていきどころを失くしたアメリカは、各地にチョイチョイ、ちょっかいを出していた。

 

 今思えば、「冷戦後」の各地の混乱も長かったような気がする。

 

 今、若い人の間でソ連への関心が高まっているとのこと。

 

 じゃあ、冷戦期から今に至るまでの間にあった「冷戦後」については知られているのだろうか?

 この時代は各地に紛争が細かく散ってしまったので、なかなか語るのが難しい。

 

 そこで、この「冷戦後」を描いた作品を紹介しようと思う。

 

 と言っても、それも娯楽作品として世に出ているので、真面目な論文とは違うんだけどね。

 でも、あの頃をリアルタイムに過ごした身から言えば、東西のプロパガンダ合戦なんてものは、安いスパイ小説並みだったように思える。それが日常生活に常にあったんだから、これから紹介する作品も「これはフィクションだよ」なんて笑っていられるだろうか?

 

 案外、真面目な論文よりも、当時の人々の皮膚感覚に近いような気がする。

 

 

 

 

1,マスターキートン(マンガ)

 

 今の40代前後の世代にとって、スパイものと言えばこの漫画が思いだされるのではないだろうか?

 作中に出てくるサバイバル技術の数々は、思春期の男子の心を刺激するのに十分。

 

 歴史研究を志しながらも生活のために保険会社の調査員をせざるを得ない中年男・平賀太一。しかし実は彼は、イギリス特殊部隊SASの指導官の資格を持つ軍事エリートだった!・・・・という、これまた男のロマンを刺激する魅力的な設定。

 

 ただ、この作品が描かれたのが1990年代。そう、ソ連が崩壊した後の時代で、特殊部隊とかスパイが暗躍する時代ではなくなりつつあった。

 それじゃあ、スパイものはできないのか?となると、正反対。

 ソ連や東欧といった親分がいなくなった後、コントロールを失ったスパイやテロ組織が各地で勝手に行動を始め、世界は新たな混沌に突入していた。マスターキートンでは、その様子も描かれている。

 また、西側の各国に潜入していた東側のスパイが、その後、西側に同化したための悲劇や、東西の雪解けによって起こってしまった家族の分裂など、ポスト冷戦の結果、発生したエピソードが多くある。

 さらに紛争の主戦場が中東に移るのに合わせて、中東のエピソードも描かれている。

 

 歴史書以外での、一般の人々の日常で起こった「ポスト冷戦」を知るには最適の作品なんじゃないか、と思う。

 

 

 

 

2,ピースメーカー(映画)

 

 冷戦期、ハリウッドはソ連を悪役とした戦争映画を数多く制作してた。

 自分が印象に残っているのは「ファイヤーフォックス」。

 ソ連が開発した最新鋭戦闘機を奪うため、ソ連に潜入したスパイのお話し。

 また、「ライトスタッフ」という映画は戦争ものではないけれど、宇宙開発でソ連と激しく競った様を面白く映画いている。そう、アメリカとソ連は戦争するのではなく、宇宙で激しく戦っていた。

 そんなハリウッドの絶好の強力コンテンツだった冷戦が終了して間もない時期に公開されたのが、1997年の「ピースメーカー」。

 崩壊したソ連を引き継いだロシアは、混乱を迎えていた。西側各国は、軍の動向を不安視した。あの巨大なソ連軍を統率できるのか?そしてソ連が持っていた核兵器は、ちゃんと管理できているのか?

 ソ連崩壊後に一時的に無秩序となっていたロシアでは、核兵器が持ち出された、という噂が流れていた。

 そんな噂を映画の題材にしたのがピースメーカーという作品。当時、世界一のイケメンと言われたジョージクルーニーを主演に迎え、これまた当時、ドラマ「ER」で注目されていたミミ・レダーを監督にした戦争アクション。

 

 正直言って、ストーリーは、最初は旧ソ連の分派が核兵器を盗むなど、「組織」の壮大さを実感させていたのに、進行と共にショボくなっていったのが残念なんだけど、はっきり言って実に面白いB級アクション映画だと思う。

 

 この作品を見れば、極上のB級映画を楽しみつつ、当時の世界情勢がわかってしまう!

 

 

 

 

3,神の拳  フレデリック・フォーサイス (小説)

 

 1990年、ロケット砲弾開発の世界的権威、ジェラルド・ブル博士がブリュッセルで暗殺された。彼の死と同時に、欧州各地の港や輸出口から、謎の巨大部品が発見される。

 その部品の輸出先は中東のある地域であった。

 そして間もなく、イラククウェートへ侵攻。

 世界から結集した多国籍軍を前にしても、イラク大統領のサダム・フセインは不敵な笑みを浮かべていた・・・・・ 

 

 こちらは書籍です。小説ね。

 冷戦期はスパイ小説も花盛りで、日本でもたくさん発表されていた。

 しかし冷戦終結とともに、それらの架空のスパイたちも相次いでリストラ。

 もはやスパイ小説は過去の歴史遺産となってしまうのか?と思われた1990年代中盤に出版されたのがこちらの作品。

 冷戦後、馬鹿力だけが残ったアメリカは「新たな敵」として、中東のイラクに標的を定めた。

 それまでのイラクは、イラン・イラク戦争という、中東に限定した紛争を起こしている国、くらいの認識だったのに、突如クウェートに侵攻してアメリカが「敵だ!」と設定したとたん、アメリカのメディアはこぞって「悪の帝国イラク」に注目!

 「潤沢なオイルマネーを背景に、装備を充実させている」と宣伝し、CNNだかどっかのアメリカの放送局ではイラクの砂漠秘密基地の想像図を公開。

 なんとあの砂漠の下に、4階層もある基地が作られており、戦闘機の格納はもちろん、イラク兵が快適に暮らせる施設・食料もそろっている、と!

 その想像図が、今なら笑っちゃうレベル。本当にサンダーバードの秘密基地みたいな感じだったのさ。何もない砂漠が突然割れて、中から戦闘機の滑走路が現れて出撃するんだってさ。円谷プロダクションに制作依頼があったんじゃないのか?と疑うレベル。

 

 でもね、まだまだネットなんてなかったから、世界中の人が信じちゃったんだよ。

 しかもこの時、アメリカ軍は世界中のメディアを使って、宣伝工作をしていた。あの「ニュースステーション」でも、アメリカ兵の女性のインタビューが放送されて。自衛隊でも女性は在籍していなかった時代に、「女性兵士」というだけでも日本では珍しかった。で、司会の久米さんは「彼女は戦争が始ったら、パラシュートで最前線に降下するという、危険な任務を実行することになっている」と発言。この「最前線にパラシュートで降下する」というのは各メディアでも繰り返されていて、人々は「戦争が始ったら米軍はまず、パラシュートで最前線に乗り込むんだ」と思い込んでいた。

 

 今ならね、そんな重要な作戦をあからさまに公開するわけないじゃん、って思うけど、冷戦のフィクション合戦から覚めていなかった世界は、信じちゃったの。

 そして実際に戦端が開かれると、パラシュートで降下されることなどなく、サウジから大量の戦車部隊が突入。

 「非常に怖い」と宣伝されていたイラク軍も、多国籍軍の侵入と同時にあっさり降伏。米軍が捕虜たちに投げた食料に飛びついて群がるイラク兵が映し出されていました。実は金欠で、兵士に食料も供給できない状態だったとさ。もちろん「地球防衛軍」並みの基地もアメリカメディアの妄想。

 拍子抜けもいいところ。で、結局、「パパ」ブッシュが始めた最初の湾岸戦争では、イラク核兵器をもっていなかったことが判明。

 

 この「神の拳」は、実はイラク核兵器を完成させていた、というフィクションを中心にした非常に面白いスパイ小説です。

 主人公のスパイはもちろん、パパブッシュ、サッチャーなどといった時の各国権力者も登場する、非常に豪華な内容。

 数あるスパイ小説でも、絶対にお勧めできる作品なので、ぜひ、この機会に読んでほしい。

 

 

 

 なんか冗長になってしまったけど、一度は冷戦の構図が無くなったはずなのに、今また、ロシアの動きがかつてに似ているような。

 

 でも、ロシアも単なる拡大主義で動いているわけではなく。

 ロシアも連邦国家なのだけど、特にコーカサス地方の連邦内共和国は、ソ連崩壊時に独立を目指してロシア軍と激しく戦った地域で、もしウクライナNATOの影響下に入ってしまうと、ウクライナに近いロシア内の共和国へも独立の動きが再燃しかねない。

 

 一見、ロシアがウクライナと言う「外敵」と戦っているように見えるけど、実は対応を誤れば自国領をさらに失いかねない状況なわけです。向こうには向こうの事情がある。

 そしてソ連とは段違いに軍縮が進んだロシア軍では、この地域に兵力を集中しているため他の地域に余力を割いている余裕はない。

 

 じゃあ、ロシアは極東の日本には何もしないのか?となる。

 

 でも、よく考えて見よう。そういえば最近、しきりにミサイルをぶっ放している国があるような・・・・・・。