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函館本線と天保の改革

 皆さん、「天保の改革」をご存知ですか?

 

 言わずと知れた江戸時代の「三大改革」の一つですね。テストには必須の事項です。

 

 江戸時代の三大改革と言えば、斜陽の江戸幕府を立て直すための経済改革、というイメージがあります。

 

 天保の改革も、幕府財政回復のための財政政策の側面を持っていますが、自分が改めて江戸時代について学んだ時、この改革だけは他とは少し異なる性質を持っていたことがわかりました。

 

 天保の改革が行われた時代、アヘン戦争でイギリスが清に勝利し、また日本近海にもロシアの船が接近していました。

 そう、西洋諸国の影が現実的に近づいていたのでした。

 

 そのため、天保の改革には、江戸湾防備など「国防」の内容が多く盛り込まれています。

 

 その中でも自分が気になったのは「霞ヶ浦の運河開削」です。

 

 なんで霞ヶ浦に運河を作ることが「国防」なのか?

 

 江戸時代の物流は、東北であろうと九州であろうと、一度、天下の台所と言われた大坂に集められ、そこで売買されてから江戸を中心とした各地へと流通していました。

 もっとも、天保の改革の頃には大坂を介さずに直接、大市場の江戸に物資がもたらされるようになってはいましたが。

 

 また、当時の国内物流の基本は海運。北海道でも「北前船」の文化があったように、外洋を中心とした海運によって、日本の物資輸送は支えられていました。

 

 その日本の物流体制に脅威を与えたのが、優れた外国船の日本近海進出です。

 

 アヘン戦争の結果を見た江戸幕府は、外国船によって海洋の物流網が寸断される事態を懸念。

 

 大都市・江戸への食糧等の物資供給を断たれないために、東北から外洋を経ることなく直接、江戸へコメなどの食料を輸送する手段を確保する必要を感じ、東北から江戸へ続く霞ヶ浦を重要な水運路として整備しようとしました。

 

 つまり当時から江戸幕府は、江戸への食糧供給の維持も「国防」の一つと考えていたのでした。

 

 

 

 話変わって現代の日本ですが。

 

 北海道新幹線の札幌延伸が近づく中、沿線の鉄路の存廃が議論されています。

 

 その中に「長万部ー函館間」も含まれていると聞き、意外に思ってしまった。

 

 この区間は人員輸送では確かに赤字ですが、物流路線と考えると異なってきます。北海道と本州との重要な物流路線として使用されているのです。

 

 北海道の産物の多くがこの路線を通って首都圏や近畿圏にも運ばれています。

 

 海運の方がコストが安い、という考えがありますが、物流の維持も「国防」と考えるのなら、物流経路を複数確保しておくのも「国防」と言えると思います。

 

 くしくも最近、中国とロシアの海軍船が日本近海を自由に航行しています。

 

 先日も、ロシア海軍の艦船が東京近海に集結していた、とのこと。

 

 つまり、直接、日本を攻撃せずとも太平洋を航行する日本の貨物船を威嚇することができる。

 

 これは現在、実際に黒海で行われようとしていることです。

 

 ウクライナの物流は黒海経由がメインなため、ウクライナからの小麦の輸出が困難となり、世界中の食糧事情に影響を与えています。

 

 もし、今回のウクライナ紛争から学ぶものがあるとすれば、物流路の確保も国防の内に含まれるとわかるはず。

 

 自分は鉄道ファンではありますが、この「長万部ー函館」間だけは鉄道ファンのノスタルジーで存続を求めるのではありません。

 

 国防政策の一環として、国有も含めて維持すべきと思います。

 

 江戸時代の日本人が、天保の改革において重要視した「物流の維持」が、現代の日本で「費用対効果」だけで語られないことを願います。