これまでPCエンジンの性能の高さについてお話してきましたが、PCエンジンのゲームソフトもまた、ファミコンと大きく異なっていた。
今回は、PCエンジンのゲームについてお話しします。なお、初期のゲームが中心になってしまうのでご勘弁を。
1、THE 功夫
PCエンジンが世に出てすぐにリリースされた作品。
PCエンジンの登場時、その性能の高さをアピールするかのようなゲームが続々と発売されました。
この作品もその一つ。
なんと画面の半分近くの高さのあるキャラクターたちが、飛んだり蹴ったり殴ったりしている!!
ファミコンは容量の問題から、どうしてもキャラクターは小さくならざるを得なかったのですが、このゲームはすべてのキャラがデカく、しかも詳細に描かれていました、主人公の腹筋までリアルに再現!
今思えば、不自然なまでにデカ過ぎた感はある。でも、「容量」という限界を意識せざるを得なかった当時のファミコン少年たちに、「限界が無くなった!」という強いメッセージを発することに成功してました。
2、邪聖剣ネクロマンサー
これも初期に発売された作品。ジャンル名は「ホラーRPG」と称されていました。
その通りで、とても怖い雰囲気の漂うゲームでした。
ゲームの世界は独特のゴシックホラー調で描かれ、敵を倒した際には血しぶきのアニメーションが流れるなど、ファミコンでは考えられなかった演出も採用されていました。
ファミコンではドット絵での表現になってしまうだけに、どうしてもキャラクターに愛くるしさが出てしまいますが、この作品ではそれらの「ファンシー」な要素を一切排除。
そう、PCエンジンの高い表現能力によって、「ホラーゲーム」というジャンルも家庭で再現可能になったのでした。
しかも難易度は非常に高い。
夜、一人では遊ばないでください。
3、ダンジョンエクスプローラー
同時期に発売されたメガドライブには、ソフトメーカーの雄であるセガから多くの名作がリリースされました。しかし当時のセガはとても個性の強く、メガドライブもどちらかというと「マニア」の支持を獲得する一方で、ライト層から距離を置かれてしまう結果となりました。
しかしPCエンジンは、発売が家電メーカーの最大手であるNECであったこともあってか、家族向けのソフトな印象が持たれました。
そのイメージの象徴的なものとして、PCエンジンでは5人で同時に遊ぶことができるという、マルチプレイを採用したこと。これによって対戦ゲーム、団体ゲームの楽しみが増大しました。
例えばナムコから発売された「ファミリーテニス」では、合計4人同時プレイによるテニスのダブルス戦が実現。
今ではネットで知らない人たちと100人単位で同時プレイするのが当たり前になってしまったけど、その大人数プレイを最初に実現したのも、PCエンジンだったのです。
そしてダンジョンエクスプローラーが登場。このゲームは5人同時プレイ可能のアクションRPG。協力していると思ったら、一人がおかしな方向に行ってしまったり。ワイワイ楽しむことのできるRPGです。
4、R-TYPE1&2
PCエンジンの性能を世に知らしめた、伝説的なゲーム。
このRーTYPEの移植は、子供やゲーム界に大きな衝撃を与えました。
ハドソンはこの移植版にて、まさにゲームセンターにあるゲームをそのまま家庭用ゲーム機に持ち込んでしまったのです!
PCエンジンがいかに高性能か。
これを言葉やカタログスペックではなく、視覚や体感で訴えていました。このゲームだけで、当時のゲームファンは、PCエンジンの性能を理解させられました。
その点において、ゲームの歴史の記念碑的な作品と言えます。
そしてこれ以降、RーTYPEは様々な機種に移植されていきますが、プレイヤーにとってはそれぞれのハードの性能を比較する目安となっていきます。
5、ネクタリス
あまり有名ではないけども、実は非常に画期的なゲーム。
戦略シミュレーションゲームというジャンルは、今ではとても多くの作品が出ていますが、PCエンジンの時代はまだパソコンの「大戦略」シリーズくらいしか、メジャーなものはなかったように思います。
戦略シミュレーションゲームは、コンピューターも思考して「コマ」を動かすので、本体の性能に左右されるのです。ファミコンもパソコンのシミュレーションゲームも、どちらもコンピューターのターンで非常に長い時間、待たされていました。
また戦闘のシーンも単調。でもそれが普通な時代。
しかし、ハドソンが発売したネクタリスは、その常識を変えてしまいました。何よりも戦闘シーンが迫力があるうえに一瞬で終わる!!
当時のゲーマーには衝撃的でした。
難易度は高め。ユニットの生産ができないため、残存のユニットをいかに大事に使うか、敵のユニットが格納されている工場を占領して自分のものにするか。
きわめてシビアな条件の中で、ゲームが進行します。
また、支援効果、包囲効果なども導入されており、圧倒的に性能の差があるユニットに対してもやり方次第で破壊することが可能。
緊張感のある将棋を行っているよう。
ネクタリス発売当時、中学生だった管理人は、北見工業大学の学生さんと交流があったのですが、このネクタリスを見て衝撃を受けていたのを覚えています。
あの一瞬で終わってしまう戦闘シーンにおいて、どれだけ複雑な演算処理が行われているのか、について、とても熱心に語ってくれました。全然理解できなかったけどね。
だからこそ、ハドソンのゲーム開発の高さも実感できました。
6、源平討魔伝
当時の3大ゲームメーカーといえばハドソン、コナミ、そしてナムコ。(エニックスはドラクエ専門メーカーになっていた)
この3つのメーカーのゲームは、グラフィックがよく、チラつきやバグも少なく、安心して遊ぶことができました。そして面白いゲームばかり発表する。
ナムコはファミコンの初期から「ゼビウス」「ドルアーガの塔」などの面白いゲームを連発し、ストレスなくプレイできるソフトを作る「信頼のメーカー」でした。
そのナムコも、登場の初期からPCエンジンにソフトを供給し始めます。
中でも「源平討魔伝」は、当時のアーケードゲームの中でも随一のグラフィックと、独特の作品性で大きな人気を呼んでいましたが、発色の限界があり、かつ画面の半分を占める主人公を表示させる必要があるため、ファミコンへの移植は不可能とされていました。
以前の記事にも書いた通り、当時は「ゲームセンターのゲームの雰囲気をどれだけ家庭で再現できるか」が、ゲーム機の性能を論じる重要な点となっていました。とはいえ、大体は6割もゲームセンターに近づけることはできませんでしたが。
ところが上記のように、PCエンジンは「RTYPE」で、その困難を実現してしまいました。ゲームセンターのゲームをそっくりそのまま移植してしまったのです!
そしてナムコから発売された源平討魔伝では、まさにファンが待ち望んでいた「ゲームセンターのままの移植」が実行されたのです。
源平討魔伝の移植は、ファンの期待を全く裏切らない仕上がりになっていました。
PCエンジンの登場は、単に性能のよいというだけではなく、ゲームセンターに行かなくてもいい時代の最初のきっかけとなった、と言えます。
同じく、ナムコから発売された作品。
名前の通り、ホラー作品。しかも当時はやっていたホラー映画「13日の金曜日」を強く意識したものとなっていました。「13日の金曜日」は、もはやホラーではなくグロテスクな衝撃作品となっており、それを意識したゲームということで、最初にゲームセンター用のゲームとしてスプラッターハウスでも、当時のゲームでは類のない残忍な描写が繰り返されていました。
そのグロテスクな描写もかなり詳細に描かれており、ゲームの内容もさることながら、これを家庭用で再現するのは難しい、と思われていました。
しかし「ネクロマンサー」のところでお話ししたように、PCエンジンの高いグラフィック再現能力は、「ホラーゲーム」というジャンルを確立させてしまうレベル。
このスプラッターハウスも、ナムコによってアーケード版そのままに移植されたのでした。
ここまでは「HEカード」で制作された作品たち。
ここまででもPCエンジンの高性能を体現しているのですが、次回からご紹介するCDーROMのゲーム作品は、そのさらに上をいくPCエンジンの可能性を示しました。
続く!!