さて、南下してきてオホーツク地方沿岸に接岸していた流氷ですが、ここで西からやってきた宗谷海流によって、動きます。
もう10年近く前になるのだけど、NHKで「流氷大回転」という番組がやっていましてね。
名前の如く、流氷が回転する現象です。
北西からオホーツク海沿岸を伝って宗谷海流が駆け降りる際に、渦ができる。
なぜ渦ができるか?ですが、ここでは詳しく書きません。突っ込みが怖いから(爆笑)。物理学の分野で語れるそうです。調べてね。
とにかく、北海道のオホーツク海沿岸には渦が並んでできるそうです。
この渦が流氷のある海域で起こると、流氷が渦に乗って回転するわけです。
この時、渦の内側に向かって流れができ、しかも上向きに起こる、とのこと。
流氷もそれに乗って内側に向かう。
この時、流氷は「攪拌子」として働く、らしい。
つまり海水が「混ざる」のを促進する。
そしてこの回転によって攪拌されることで、海底に溜まっていたミネラルが浮上し、光合成可能な浅い層まで巻き上げられる!
こうして到達したミネラルは、光合成細菌の成長・増殖を促します。
光合成細菌が増えるということは、プランクトンも増える。つまり他の海の生き物も増える、ということです。
そのため、オホーツク海では、アムール川河口から遠く離れた北海道のオホーツク海沿岸でも、栄養が豊富になるわけです。
さて、網走などに接岸した流氷ですが、旅はまだ終わりません。
北海道のオホーツク海沿岸に接岸した流氷は、対馬海流に押し流されて東へ移動します。
ついには千島列島に到達。
千島列島の小さな隙間から太平洋に出てきたオホーツク海の海水は、ここで北東からやってきた親潮と合流。
親潮は、そこにいると魚がよく育つためにあだ名されましたが、流氷が運んできた栄養の多いオホーツク海の海水と合流することで、栄養豊富となります。(オホーツク海だけではないけども)
つまり親潮の特色を形成することにも、流氷は貢献している。
この親潮は北海道沿岸を南西に向かい、噴火湾や北東北の沖で黒潮とぶつかります。
するとなにが起きるのか?
親潮と黒潮という巨大海流がぶつかった海域は潮だまりとなって、栄養が豊富な海域となります。
水産庁は三陸沖を「世界三大漁場」としていますが、これはシベリアの大森林・湿地地帯、アムール川、流氷、オホーツク海、対馬海流、北海道の地形、親潮と黒潮の衝突、などによって作られた、壮大な自然の仕掛けでできているのでした。
以上が流氷のお話し。まだまだ浅いけどね。
アメリカのイエローストーン国立公園は、地球の爆発的で暴力的な存在感を感じさせますが、流氷はそれと対照的な、地球の繊細さを実感させます。
地球規模のドミノというか。
一つの仕掛けによって、次の仕掛けが作動し、さらに次の仕掛けが駆動する。
まさに自然のピタゴラスイッチ。
自然を見て「ほほう」と感心したいなら、流氷を見に行こう!
追記
どうです?流氷を見ただけで、地理、地形、地学、物理や化学、生物。
非常に広い範囲に及んでいる。
ぜひ、お子さんを連れて流氷を見に行こう!