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自然のピタゴラスイッチ・流氷 その2

 さて、オホーツク海に流れ込んだアムール川の川水ですが、川の水だけに淡水です。

 

 で、オホーツク海に流れると真水は凍ります!

 

 なんぜ凍るとか?というと、オホーツク海は他の海と異なるためです。

 

 まず、オホーツク海は北方にあり、世界で最も寒い地域とされています。

 というのも、もともと北極の上空には「極循環」という下降する気流があり、それが地面にぶつかることで四方八方に広がることで、北極海の周囲の陸地には非常に冷たい空気が常に吹き込むことになります。

 さらにシベリアという広大な陸地も冷たい空気を作ります。シベリアはこの時期、放射冷却現象によってもの凄く冷えており、海からも離れた内陸部ではー50℃にもなります。そのため、よく冷えた陸地の上にある空気もスンゴク冷やされます。

 この冷たい空気もオホーツク海に注ぎ込むわけです。

 

 さらに、世界地図でオホーツク海を見てもらいたい。

 

 ユーラシア、樺太カムチャッカ、千島列島という地形に囲まれた内海ですね。

 

 外の海との「隙間」も狭く、オホーツク海は水深の浅い海なので、オホーツク海と外海との玄関口は、狭く低いため、外からの海水の流入が少ないのです。

 

 そのため、「攪拌」がされない。

 

 そのため表層の部分だけが常に冷やされることになり、凍りやすくなる。

 

 他の海では大抵、大きな海流があるのでかき混ぜられているので、凍ってしまうまで冷えることは難しい。

 

 そして、ここにアムール川からの川水である淡水が流れ込む。

 

 アムール川からオホーツク海に流れ込む淡水の水量は、想像以上に多く、このためにオホーツク海の海水の塩分濃度は他の海域よりも薄くなっています。

 

 で、海水は塩分が多いので凍りづらいのですが、淡水は凍りやすい。

 

 そのため淡水で薄まっているオホーツク海北部の海は凍りやすいのです。

 

 ここまでをまとめると、

 

 ①北極から常に南向きの冷たい風が流れてきて、さらにシベリア内陸からも冷たく乾いた空気が風となってやってくることで、海水が冷やされる。

 

 ②アムール川から凍りやすい淡水が流れ込んでいる。

 

 ③オホーツク海は閉じられた海のため、他の海域からの海水の出入りが非常に少なく「攪拌」されないため、海の表層だけが常に冷やされる。

 

 等々が重なって、海が凍り、流氷となるのです。

 

 同じ北海道付近にある日本海は、なぜ凍らないのか?という疑問も解決できるかと思います。

 日本海は南北に長いので、常に混ざり合っている。また、日本海には、日本列島に沿うように北上する対馬海流があるのですが、南方の黒潮が分かれた分流のため、暖かい海流となっており凍りずらい。

 

 ちなみに、北極の氷ができる理由も、どうやら流氷で説明できるらしい。

 

 確かに北極海も閉じられた海域。そこにシベリアや北米大陸グリーンランドからの淡水が流れ込んでくる。

 

 

 

 

 で、シベリアから冷たい空気の風が来る、と書きました。

 

 冬になると日本列島にはシベリアから冷たく乾いた空気が風となって流れてくる。

 

 この風が日本海を通るか、オホーツク海を通るか、で異なっていきます。

 

 オホーツク海は上記のように、常に冷たい海のために冷たい空気がやってくると海をこらせてしまう。

 一方、日本海を渡ったシベリアの風は、暖かい対馬海流によって、海面である下から温められることで、水分を補給する。

 この湿った風が日本に上陸すると、陸地で再度、冷やされるために大雪となります。

 

 つまり、シベリアの風がオホーツク海に吹くか、日本海に吹くか、によって、日本にもたらす影響が違ってくる。一方は流氷となり、一方は大雪となる。

 

 これも日本列島が作り出した、自然の不思議。日本は正に「水の国」なのです。

 

 

 続く