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北方領土と北海道を眺めてみよう!(2021年9月17日掲載)

 全国的には何かと様々な評価がなされる北海道新聞ですが、日本で最も北方領土や極東について、熱心に報道しているのは事実です。

 

 今回は、その北海道新聞で報道されていた、北方領土の話題。

 

 連絡船が立派になって増便された、という、一見、辺境の小さな話題に見えますが、そこからもロシアの北方領土統治の実情が見えてきます。

 

 

 

 

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またまたようこそ!

 

 ここはロシア語もわからないくせにロシアウォッチャーを名乗っている管理人が運営しているブログ。

 

 本来は「低俗、低レベル、低姿勢」をモットーに記事を掲載していますが、最近、ロシアの記事ばっか!

 

 今回も全国紙では絶対に注目されないであろう、北方領土に関する記事をご紹介します!!

 

 今回の記事は北海道新聞の4面だかの、やっぱり目立たないところに掲載されていりました。

 

 

 「ユジノサハリンスク仁科裕章】ロシアが実効支配する北方領土サハリン島を結ぶ航路に投入する2隻目の新造船「パベル・レオーノフ」が16日、ロシア西部のサンクトペテルブルクの造船所からサハリン南部のコルサコフ港に到着した。10月に就航し、北方四島との連絡船は3隻体制となる。

 同航路はコルサコフから国後、色丹、択捉の各島を巡回。現在は1991年製の貨客船「イーゴリ・ファルフトジノフ」と、6月に就航した1隻目の新造船「アドミラル・ネベリスコイ」の2隻で運航している。北方領土を事実上管轄するサハリン州のリマレンコ知事は「輸送能力が3倍になり、交通の問題は完全に解消される」と強調した。」

 

 

 なんと!北方領土の支配強化を目指すロシアが、サハリンと北方4島を結ぶ定期船を3隻に増やした!!!

 

 サハリン州知事も「交通問題は解消される!」と高らかに宣言!!

 

 これでロシアの実効支配が強まり、領土問題解決はますます困難を極める!・・・・・

 

 

 

 ・・・・・・と、簡単に行かないのが北方領土問題。

 

 定期船を増やしても、それを維持できるかが問題。

 

 だって、日本でも問題になっているでしょ?北海道の鉄道問題が。

 でも、地理的なことも考慮せず、「赤字だから」と簡単に地方の交通を廃止してしまおうとする日本政府とは対照的に、赤字であっても国民の交通手段を守る!というロシア政府の姿勢には感心してしまいます。

 ロシアにとっても負担は多いけれど、「領土を統治している!」と強い姿勢を感じます。

 

 で、ですね、実は全体としては過疎化が進んでいるロシア極東地域ですが、北方領土は人口が増加しているんです!!

 

 え?なんで人口が増えてんの?!ロシアが投資したからじゃないの?!

 

 と思ってしまいがち。しかし投資して人口が増えるなら、持続的に投資し続けなければなりません。

 一時的になら工事関係で人口も増えるかもしれませんが、長期に渡って増え続けるには安定した産業があることが前提。つまり「食っていける」状況かどうか、ということ。

 

 ということは、北方領土には「食っていける」もしくは「稼げる」産業がある、と。

 

 北海道を例に考えて見ましょう。

 

 北海道はほぼ全地域で人口減少、過疎化が進行しています。

 

 しかし同じ減少でも、地区によって差があります。

 

 例えば釧路、室蘭、函館、小樽などの町は人口の減少幅が非常に大きい。

 

 釧路は管理人の小学校の時代は、人口23万人を誇った道東の最大都市でした。あの頃は漁業が盛んで「〇年連続、水揚げ日本一」を記録する日本最大の漁港であっただけでなく、太平洋炭礦も操業していた「炭鉱の町」であり、巨大な製紙工場も健在。

 しかしその後、炭坑は規模を縮小して産業とは呼べなくなり、日本一を誇った水揚げ高も減って首位の座を明け渡してしまいました。地場産業が減ったことで人口も急激に減少。人口も17万人まで下がって「道東最大都市」も帯広と競うまでに近接し、今年、ついに製紙工場も閉鎖。今後も人口減少は避けられない情勢です。

 

 また室蘭も、製鉄所によって道内では人口の多い都市だったのですが、工場の縮小によって人口が急減し、苫小牧に抜かれてしまいました。30年前は18万人いた人口が、今では8万人。

 

 北海道3位で全国でも知名度の高い函館も、重大産業の縮小などにより人口が減少。かつては30万人の人口も急速に減り、20年ほど前には周辺自治体と合併して30万人にこだわりましたが人口流出は止まらず、今では26万人。

 

 地元の産業が弱くなったために人口減少の幅も非常に大きくなっています。

 

 一方で、例えば帯広。

 

 帯広も人口減の町ですが、平成元年と比べて大きな差はありません。しかも帯広はお、音更や札内などと言った周辺自治体の人口も増えているので、周辺を含めるとむしろ人口は増えているのかもしれません。また北見市も同じく人口が減っているのですが、自分の小学生の頃から11万人台で変わらない。

 

 この二つの都市ですが、共通するのは農業が主要産業であるということ。

 やっぱり農業は強いね。決して人口が増えているわけではないけれど、基幹産業が安定していると人口の減り方も緩やか。

 

 他にも猿払村の例が。

 猿払村って、どこにあるか知ってる?稚内の隣。そう、日本でも最も北に近い町。なんとここは人口が増えている!

 なんでこんな田舎も田舎、ド田舎で人口が増えているのか?というと、ホタテ漁が儲かっているから。猿払周辺が地元の人に聞いたのだけど、猿払では豪華な家ばっかりで三階建ても珍しくないって。

 これはオホーツク海沿岸の漁港でも聞くのだけど、ほぼ北海道特産と言えるホタテの輸出が好調で、オホーツクの漁師さんはずいぶんと儲けていらっしゃるらしい。あるオホーツク海沿いの街の漁師さんが、タクシーでススキノまで行った、という噂まであります。たぶん東京から名古屋くらいの距離はあると思う。

 猿払村の平均年収は、並み居る東京勢を押しのけて、なんと全国3位!どんだけすごいんだよ!

 

 日本各地では様々な人口増加策や、「地域おこし」などが行われていますが、結局は人だけよんでも産業が無ければ意味がないし、高収入の職があれば自然と集まってくるわけです。

 

 そしてそれは、北方領土も同じ。

 じゃあ、北方領土での産業は何か?というと、北海道との海産物の取引です。

 

 北方領土は良好な漁場であることは有名。

 

 でもせっかく魚が取れても、売る場所が無ければ意味がありません。それも高く売れる市場が。魚は生鮮品だけに、遠い場所で売るわけにはいかない。長期に渡って安定して人口が増えるには、「近くで高く売れる市場」が必要。

 

 で、北方領土の近くで高く売れる場所は北海道、それも札幌です。

 

 結局、北方領土は北海道の経済の影響を受けているのです。

 

 しかもルーブルよりも価値のある円なので、ロシア国内よりも実入りの良い収入が得られる。

 

 そう、既に北方領土は円の経済圏。

 経済特区を設定する以前に、とっくに経済特区のような形になっていたのです。

 

 

 

 というわけで、今後も勝手にロシアウォッチャーを続けます。

 

 

Давно в России!

 

 

 

 

2024年3月3日追記

 

 2024年の2月に北海道新聞で報じられていたのですが、択捉島で道路管理を委託していた業者に対し、地方政府からの支払いが滞っていて、裁判沙汰になっている、とのこと。昨年にも同様のことが起こり、その時はクリル行政府(北方領土を管轄する行政府)に支払い命令が出た、とのこと。

 

 ウクライナ侵攻以降、やはり北方領土の経済は停滞しているらしい。

 

 また、近年の北方領土の開発を支えたのは、サハリンのオイルマネーによるところが大きかったのですが、行政府が支払いできない状況であることを考えると、極東での石油の売り先が細ってしまい、税収等が減っている、と言えるのかもしれません。

 

 確かにサハリンの油田と言っても、輸送が困難だし、冬季に流氷に閉ざされることを考えると、売り先は必然的に絞られてくるのかもしれない。極東で石油が出たところで、人口の多い欧州側に輸送するためのコストは尋常ではありません。そう、石油でも「コスト」が出てくる。広大なロシア国内で移動させるよりも、近場で高く買ってくれる人に売りつけたほうがいいわけです。

 

 サハリン2に関しては、イギリスのシェルは撤退し、その株式をロシアの大手企業が取得したものの、日本企業は引き続き新会社に出資し、それをロシアも認めている。

 結局、石油が出ても売り先がなければ意味がない。

 日本も、石油の仕入れ元は確保しておきたい。

 

 西で「建前」を振りかざし、東で「本音」を吐露する。

 極東では、国際的な注目が薄いためか、「現実」がむき出しになる。

 

 極東地方というのは、日本とロシアが本音をつぶやく「場末のスナック」と言ったところでしょうか。