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今こそ、「天下三分の計」を発動せよ! その2

 さて、様々な都市と国内人口について着目してきましたが、世界にはシンガポールのように、国土が全て都市という国もあります。「都市国家」と言っていいのでしょうか?

 シンガポールは非常に経済の活発な国ですが、食料などを自給できるとは思えません。

 

 このような都市はどのように判断すべきか?

 

 これもまず、歴史を見てみましょう!

 

 

 かつて当ブログでは、「古代ローマベネチア」と題した記事を掲載しようとしました。

 

 ローマ帝国は欧州全域、トルコ、シリアなどの中東の広い範囲、北アフリカなど広範囲を支配した大帝国ですが、中世に栄えたベネチアは、アドリア海の最奥部にある浅瀬に浮かぶ小島にあった都市国家

 干潟にあった島を無理やり大きくしただけあって、市民が広大な土地を所有することなどできませんでした。

 

 土地の所有が無かったことで、交易こそ、国の発展のための数少ない手段となったのです。

 ベネチアは、ペルシャと欧州の交易路を握ることで地中海を制しました。

 この交易路を護るためなら、十字軍に同じキリスト教国を攻撃させることも厭わず。

 自国で食料を生産できず、また高度に発展していた工芸品も、材料を他国からの輸入に頼っていたベネチアにとって、交易は命綱でもあり、そのために自国の存亡が、他国の動向に左右されてしまうのは必定。

 交易が止まると、ベネチアの繁栄が止まるだけではなく、自国の維持すら困難になるのです。

 そのためベネチアのインテリジェンスは当時の欧州でも抜きんでるほど活発となり、スパイ活動や自国の方針に反する外国人の暗殺はもちろん、他国の内政を密かに動かすこともおこなっていました。

 

 広大な領土を支配し、首都ローマがその支配地からの物資を吸収して通貨を供給することで繁栄した古代ローマ帝国と、領土を持たずに交易に専念することで繁栄を維持したベネチア

 

 非常に対象的ながら、ヨーロッパの歴史では珍しく、どちらも1000年もの長い間、存続し続けました。

 

 

 で、シンガポールですが、自国では食料の自給ができず、燃料もなく、自国で生産しようにも材料も他国に頼らなければならない。

 もっと言えば、防衛も自力ではできない。

 アジアでも有数の経済センターとなったシンガポールですが、裏を返せば貿易や経済活動が自国の存亡に直結している。それだけ他国の政治動向に左右されやすい国、とも言えます。

 

 

 ここまでからお話を中国に戻しますが。

 

 中国には複数の1000万人以上の大都市圏があります。

 

 これらの都市圏はそれぞれモノを集める市場としても大きく、モノを集めた対価として通貨をばらまくエンジンとしての働きも非常に大きい。

 

 つまり北京はもちろん、上海にしろ、広州にしろ、重慶にしろ、香港にしろ、それぞれの都市は単独でも十分に世界経済でも大きな存在感を示すことができる、と言えます。

 

 国内に経済の核となる都市が散在し、古代ローマの首都ローマのように、国内でも圧倒的な大都市を持たない。(つーか、圧倒的に大きな都市が多すぎる)

 

 あれ?これはある意味、ドイツと似ていますね。

 

 ドイツとの違いは、ドイツはそれぞれの都市には大企業があるために独自財源となる税収が見込めるけど、各都市の人口が小さいために国内の経済の核となる都市がないために独立傾向にあり、逆に中国は世界企業こそないものの、国内の地方都市がそれぞれ経済の核となるほど巨大なために独立も可能なこと。

 

 つまり中国の各都市も、独立しても自立できる潜在力がある、ということ。

 

 経済で見る中国の姿は、ドイツと同じ連邦制に近いかもしれない。

 

 実際、中国の歴史を見ると、秦、漢、隋、唐、晋、宋、元、明、清などの統一王朝

が思い浮かぶものの、春秋戦国時代五胡十六国南北朝時代五代十国の時代など、群雄割拠していた時代も、100年単位で続いていたのです。

 

 その群雄割拠の時代の都市人口を調べてみると、首都と地方都市であまり人口に差がないのかもしれません。

 つまり中央となる巨大首都がないために、経済の指向性も小さかった、と。

 

 ちなみに、ここで「もしかして日本の戦国時代もそうだったのか?」と思われる方もいるでしょう。実際、戦国時代の日本の都市の人口を調べると、京の都が人口で突出していたとは言えず。

 京、大坂を中心とする畿内は日本の他の地域よりも大きな経済力があったものの、江戸のような抜きんでた都会ではありませんでした。

 なんせこの時期、京や山城は応仁の乱の主戦場となったので、人口の減少が激しかった。

 つまり戦国時代の日本も、経済の結びつきでいうと一極集中とは言えなかった。

 つーかこの時はそれに加えて、特に西日本でシルバーラッシュとなって、地方の大名では「ウッハー!」な状況になっていたのもありますが。

 

 とにかく、中国は潜在的に、地方の独立の可能性を秘めているわけです。

 

 このような独立傾向のある国土を中央集権的に一体として統治するためには、経済の実態ではなく、強力なイデオロギーが必要。

 

 今や日本はおろか、アメリカをもしのぐほど金満となった(最近はマズイらしいね)中国ですが、資本主義国家が「あんたら、それ本当に共産主義なの?」と指摘するのはお門違いです。

 

 共産主義かどうかなんて、実際のところ、どうでもいい。

 

 下手したら勝手に活動しかねない地方都市をまとめるためには、嘘だろうがなんだろうが、イデオロギーの名のもとに統制するしかない、といえる。

 

 一見すると豪勢を誇るように見える中国共産党ですが、実は自分たちの統治の正当性を維持するために、危険と隣り合わせであることがわかります。

 

 景気が良くなりすぎると民間や地方が勝手な行動をし始めるかもしれない。

 一方で、景気が悪くなって失業者が増えると、それこそ共産主義の本質と矛盾が露呈して、統治の正当性が揺らいでしまうかもしれない。

 

 実は悩める大国でもあるわけです。

 

 

 最近、中国は尖閣諸島をはじめ、日本や近隣諸国に軍事的な圧力行動を繰り返しています。

 

 もし、これ以上、威圧が活発になるのであれば、中国に対する策を講じる必要があります。

 どのような「策」を取るべきか、ですが、これも地図帳からわかる上記の内容で、判断できます。

 

 中国の各都市は、独立する潜在性が高い。

 

 それならば、各都市の経済活動をさらに活発化させて、中央の縛りを脱却させ、地方都市を暴走させる!

 

 都市圏ランキングで挙げた上海や広州、香港などが、独立しやすい都市と言える。

 

 つまり中国国内の大都市である上海、香港の経済を活発化させて首都・北京の経済圏から脱却させて、これらの都市を中心とした国に分裂させる!

 そして「北京国」「上海国」「香港国」を建国させる!

 

 名付けて

 

 「天下三分の計」!!!!!!

 

 

 どう、面白かった?

 

 (実は「天下三分の計」を言いたかっただけのシリーズでした。)