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日本とドイツを比較してみる その2

 前回の記事で、ドイツは国内に、圧倒的な巨大都市を持たない、と書きましたが、それがドイツの国内政治の形にもあらわれています。

 

 ドイツは連邦制で、国内の州は、日本の都道府県よりも強い自治権を持っています。

 

 その理由ですが、単にドイツ国内で独立志向が強いというわけではなく、ベルリンが巨大都市とは言えないため、ドイツ国内に経済の求心力を持つ存在がないことも表しています。

 

 さらに言えば、各都市が「独自財源」を持っていることも挙げられる。

 

 次に、ドイツ国内の都市にある本社を上げていきます。

 

 

 

 1,ベルリン・・・シーメンスドイツ鉄道ドイツテレコムダイムラーBMW

      *シーメンスダイムラーBMWなどの世界企業が名を連ねるも、本社

      機能の一部を置いているにとどまっているらしい。首都だけにね。

 

 2,ハンブルグ・・エアバス、ルフトハンザ、モンブラン

          バイヤースドルフ(日本名ニベア

      *ハンブルグはドイツの物流の中心都市で、経済もフランクフルトに

       次いでドイツ国内では活発な都市、とのこと。ベルリンが1位じゃな

       いんだね。かつて「ハンザ同盟」の中心地だっただけに、欧州第二位の

       港湾都市となっており、500以上の海運企業が集積しています。

       

 3,ミュンヘン

  BMW(本社)、シーメンス、MAN AG(トラック・バス、産業用エンジン)

  クラウス・マッファイ(重機械メーカー)、MTUエアロエンジンズ(航空エンジン、産業用ガスタービン)、エアバスアリアンツ(保険。世界有数の金融グループ)

  インフィニオン・テクノロジーズ(半導体メーカー。一部の商品で世界トップのシェアを持つ)

  キマンダ(世界第3位の半導体DRAMメーカー)

  オスラム(LEDなどのランプのメーカー。純利益1.7億ユーロ(2700億円)の大企業)

  アーノルド&リヒター(世界最大の映画機材メーカー)

  ローデ・シュワルツ(エレクトロニクス)

 このほか、マイクロソフトマクドナルドが欧州本部を置いています。

 *いやあ、日本でも有名な企業名がズラリと並んでいますね!しかも半導体メーカーもある!まさに「モノづくりの町」!

 そしてその企業群からもわかる通り、ドイツで最も経済力の強い都市となっています。

 

 

 4,ケルン

   ルフトハンザ航空

 *すんません、ケルンに本社を置いている企業を探したのだけど、上の航空会社だけ。見本市として有名らしい。周辺にレバークーゼンデュッセルドルフ、ボンがあるので、「都市圏」として見た方がいいかもね。

 

 

 5,フランクフルト・アム・マイン

   無し 

  (衛星都市にはオペルの本社がある)

 *なんと、フランクフルトには製造業で本社機能を持つ有名企業がない!とのこと。

  フランクフルトは税金、家賃、地価のすべてが高いために、企業が周辺都市にうつってしまった、とのこと。

  しかし、フランクフルトにはドイツの金融機関が集結しています。

  欧州中央銀行ドイツ連邦銀行のほか、ドイツ4大銀行とされるドイツ銀行コメルツ銀行、ドイツ復興金融公庫、DZ銀行が本拠地を置いています。

 このうち、欧州中央銀行はユーロ圏20か国の金融政策を担う、ユーロの中央銀行

 ドイツ連邦銀行は、ドイツの中央銀行です。

 つまりフランクフルトは、ドイツの金融・経済政策の中心であることはもちろん、ユーロ圏の金融・経済政策も左右する、欧州の経済の中心地でもあるわけです。

 この欧州中央銀行の金融政策ですが、ユーロ圏20か国の金融政策を担う、とあるとおり、複数の国の経済の意思決定に大きな影響を持っています。記憶にあるのが2009年の「ギリシャ危機」の時。

 ギリシャ危機は、ギリシャ財政破綻により始まりましたが、ギリシャは通貨ユーロを使用しているため、場合によってはユーロの信頼低下につながる可能性もあり、他のEU諸国も座視することはできず、ギリシャに厳しい経済政策、緊縮財政を要求しました。詳しい経緯は専門家のブログを見てね。

 とにかく、一見、圏内の人口が多そうに見えるユーロですが、裏を返せばギリシャは独自の経済政策を実行することができず、他のユーロ諸国も自国通貨の防衛のために他国に介入しなければならない、という不安定要素もはらんでいることが露呈されました。

 ダラダラ書いたけど、フランクフルトは欧州で最も重要な金融都市、として覚えておきましょう。

 

 

6,シュツットガルド

 ダイムラー、ポルシェ、ボッシュ(世界最大級の製造業)

 ヴォルフ&ミュラー、テュプリン、ゴットロープ・ロンメル(3つとも建設会社)

 ヴュルテンブルグ保険(そのほか、多くの保険会社が拠点を置く)

 *みなさん、見たこと、聞いたことがある大企業がありますね。ポルシェの名前をみるとは。ドイツは世界的に有名な自動車会社が複数あるんですね。

 

 

7,デュッセルドルフ

 ロレアルドイツ、ボーダフォンドイツ、メトロ(欧州有数の小売業グループ)

 E.ON(欧州有数のエネルギー会社)、ラインメタル(軍事と自動車の企業)

 ヘンケル(健康商品、洗剤、接着剤の企業。接着剤では世界最大の売上を持つ)

 メルセデス・ベンツ・スプリンター(自動車)

 *ここにも日本でも有名な企業があるほか、日本では知名度が低くても「世界最大」「世界有数」の規模の企業が複数ありますね。やっぱりドイツは偉大な製造業の国なんですね。

 

 

8,ドルトムント

  *世界的な大企業が本社を置くというよりは、中堅規模の企業がたくさんあるらしい。

 すんません、ドイツの人に聞いて。

 

 

 

 ・・・・長々書いてきたけど、何を言いたいかというと、世界的な大企業が首都のベルリンに集結しているのではなく、国内の大都市に分散している、ということ。

 また、金融などの中心地もベルリンではありません。

 

 つまり、それぞれの自治州、都市は、独自の税収源を持つ、ということ。

 

 独自の収入源があるため、「中央政府」もしくは「首都」から半ば独立して存在することもできるわけです。

 つまり、独自財源があるから、自治の範囲も広い、と。

 まあ、もともとドイツは近世以前まで、一つの国としてのまとまりだったわけではなく、300にも及ぶ諸侯が割拠する地だったので、歴史をそのまま反映しているともいえる。

 日本以外の国では、イタリアでもドイツでも、17~18世紀になってから「国」と意識を形成し始めたところが多いのです。

 

 日本は正反対ですね。

 日本は東京をはじめ、首都圏に大企業の本社が集結しています。

 また東京が政治・経済・交通など、全ての部門の中心地となっています。

 

 

 もう一度、ジオグラフィックの記事に戻ってみましょう。

 

 記事では、首都ベルリンはドイツ国内の他の大都市からの交付金を受け取っている。

  日本は、地方が首都東京からの交付金を受け取っている。

 

 また、ドイツ国内には大都市がないため、消費の中心となる都市(市場)がない。そのため、国内産業を維持するためには、他国の大市場の動向に左右されやすい。

 

 一方の日本は、東京という巨大都市を持つ。

 

 1億2千万人という、ユーロ圏人口、アメリカ人口に匹敵する通貨圏を持ち、国内に世界有数の巨大市場を有する。

 

 ドイツと一緒にできるでしょうか?

 

 さらに言えば、日本以外の国のほとんどは、他国と国境線を有しています。

 日本は海に守られているため、安全保障の面で有利。

 日本は飲み水も独自に確保している。中国のメコン川のダムのえげつなさを調べてみてほしい。下流の国の水資源を握ってしまっている。

 そして、自国内に市場を持つ。

 

 なのになぜ、この30年間、政治家の方々は悲観的な将来ばかり語ってきたんでしょうか?

 他の国の政治家から見れば、「なんでそんなに恵まれてるのに、あきらめてんの?」とか「それじゃ、ウチとかわって」と言われてもおかしくない。

 

 ここまで有利な条件があるのに、「人口減少社会だ」「高齢化だ」と嘆くだけで何もせず、ただただ悲観しか口にできないのなら、いっそのことすべての権力を離れ、地方で不安を抱えながら人生を終えては?

 新しい総理大臣には、悲観にとらわれず、日本の有利を生かして希望を語れる人になってもらいたい、と願う今日この頃。

 

 

 なお、記事はまだ続く。

 

 今度は世界地図を、「人口」をキーワードに見ていきましょう!

 

 

 続く