29年前の今と同じような時期に、まだ高校生だった管理人は深夜に中継されていた「日本VSイラク」の試合を見ていた。
あの時はまだ、「日本はスポーツは弱い」という認識が世間にはあり、当然、サッカーもアジアでも弱い方だ、と思い込んでいた。
いや、Jリーグができるまで、サッカーに興味を持っていた人なんてほとんどいなかった。当時はプロ野球、というよりも巨人が国民人気を独占していた。
そう考えると、そもそもスポーツで「世界」を感じる機会なんて、オリンピック以外はほとんど皆無だった。たまにプロ野球でシーズオフに、メジャーとの交流戦が行われるくらい。それもメワールドシリーズが終わったばっかりのジャーリーガーにとっては、シーズンオフの日本旅行のついでに野球をやる、くらいな感じであった。それでも強かったんだからすごいよね。
そんな、相手が遊び気分の交流試合でも、「世界」を感じる機会がない日本人にとっては貴重だった。
Jリーグは凄かったですね。何がすごいって、制度上は「世界」と完全につながっているんだもの。
所属チームとは他に「日本代表」があると初めて知ったし。普段敵同士の選手が、代表では一緒になって戦うんだからね。野球には無かったシステムに興奮したものです。
長々話したけど、29年前のサッカー日本代表は、まだワールドカップに出場したことがなかったどころか、アジアでも苦戦していた。
イラク戦の数日前に行われた韓国戦に勝利したとき、「奇跡だ!!」「快挙達成!」」と大騒ぎになった。
今、韓国戦、イラク戦で視聴率が50%になることなんて、あるのかな?
そのくらい、日本中がイラク戦に注目していた。
そしてもちろん、「ドーハの悲劇」も目撃しました。
「やっぱり世界は遠かった」
これが当時抱いた感想。
でも、この試合以来、サッカーの日本代表戦は「大」が付くほど注目されるようになり、素人でも対戦相手が「欧州」か「南米」か、などと話すようになった。
あれから「ワールドカップの景色を見たい」と、世間が渇望するようになったと思う。
素人でも、あの「悲劇」が出発点になったのだと理解できた。
不思議なもので、ドーハの悲劇以来、他の競技でも世界を意識するようになった。
野球では野茂英雄が渡米して、メジャーの景色を見せてくれた。
当時、野茂は日本球界から大きな批判を受けていた。でも彼の活躍が黙らせてしまった。それどころか、ポスティングシステムなどの制度が整っていった。
サッカーがプロ野球を変えてしまった。
その後、バスケもバレーも、様々な競技がリーグを設立していった。
「ドーハの悲劇」は、日本のスポーツを「開国」させた。
そして2022年の今日、ベスト8をかけてクロアチアと対戦。
29年前の「ドーハの悲劇」の時、誰がその後、日本がドイツ、スペインを破り、準優勝国のクロアチアと互角の勝負をすると予想できただろうか?
すべてはあの日から始まった。
しかし、今の日本代表にとっては29年前の「ドーハの悲劇」は、すでに生まれる前の「歴史上の出来事」に過ぎない。
いつまでも「あの日」を語っていないで、そろそろ歴史にしないといけないですね。
そして、ドーハの悲劇を知らない世代は、今日の敗戦をどう思ったか?
繰り返すが、日本は「絶対に勝てない」と思われていたドイツ、スペインを破った。
そして、ベスト8をかけた大舞台で、準優勝国のクロアチアを相手に堂々と戦った。
クロアチアにも勝てそうだった。
どう見えたか?
確かにベスト8に進出できなかったが、ベスト8の景色はあと数ミリまで近づいた。
それもこれまでと違うのは、強豪を相手に勝利して、トーナメントでも物おじしなかった、という点。
29年前の悲劇を目撃した世代にとっては「ドーハの歓喜」だけど、29年前を知らない世代にとっては、新たな「ドーハの悲劇」が始まったと言える。
29年前から今日までは、「ワールドカップに出場すること」が目標だった。
しかし今日からは「ワールドカップで優勝すること」が目標となる。
管理人の世代はここまで29年もかかったけど、決して悪い時間でもなかった。
どのくらい時間がかかるかわからないけど、今日の悲劇を目撃した世代も必ず「優勝の景色」を見ることができる日が来るよ。
そしてつくづく思った。オリンピックもワールドカップも、ジジイやババアのためにあるのではなく、若い世代、それも10代以下の子供のためにあるんだ!(管理人は当然、ジジイの一人)
日本代表の皆さん。お疲れさまでした