ついに、ついに!!
夏の高校野球の優勝者のみが手にできる優勝旗が、白河の関を超える!!!
自分が物心がついたころには、すでに高校野球を観戦していた。
小学校、中学校の夏休みの思い出の風景には、祖父祖母の家でテレビに映っていた甲子園がある。
どんなに時代が変わっても、「夏の甲子園」だけは変わらない。
そんな幼少のころから、「優勝旗が白河の関を超えるか?」というフレーズが使われてきた。
北海道に住んでいたこともあって、「できるだけ北のチームを応援する」のが不文律になっていたのだが、当時は地域による実力差が明確な時代。西日本が圧倒的に強い情勢下で、北日本で唯一、優勝の可能性があったのが宮城県代表。
思えばこれまでの観戦の記憶において、「強豪」と呼ばれるチームをいくつも見てきた。池田高校やPL学園、松商学園などなど。
しかしどの高校も、一時代を築いては低迷していった。
なのに、仙台育英だけは違った!仙台育英ははるか昔から強豪と呼ばれており、それは今も続いているのだ。これは長い夏の高校野球の歴史においても、稀有な存在なのではないか?
なので、北日本で優勝するならば、当然のように仙台育英だろうと思っていた。
しかし現実はなかなか厳しい。
1989年の夏の仙台育英を覚えている。
夏の大会で火の玉と化した大越投手が、甲子園の主役となった年だ。
あんな怪物を擁しても、仙台育英は優勝できなかった。
仙台育英だけではない。秋田経法大の中川投手、東北の嶋投手も記憶に残っている。
東北は、決して高校野球の「弱小地域」ではない。優勝チームが現れなかったのが不思議なくらいだ。
これでついに高校野球の空白地域はなくなった。
仙台育英の選手の皆さん、おめでとうございます!
皆さんが東北や宮城にもたらしたものは、優勝旗だけではありません。
まさに「2022年の夏」そのものを、持ち帰ったのです。
2022年の夏は、東北以外の地域では、やがて長い高校野球の歴史の一つになっていくでしょう。
しかし!
東北や宮城では違う!
これから何十年も、東北の人たちは、この時期が来たら、生地に帰るように2022年の夏の優勝の瞬間を、動画で見るでしょう。
あの瞬間を思い出すかのように、年に一度、必ず動画を再生させるでしょう。
仙台育英の選手が地元にもたらしたものは、永遠に形に残る「夏」です。
東北の皆さんは、これから先、ネット上で何度でも、全国の頂点に立った今年の夏を思い出すことができる。
これが地方にとって、どれくらい価値があるものか。どれくらい計り知れないものか。
とても言葉では表現できない、とてつもないものをもたらした!
そしてその映像の中には、永遠に変わらない選手たちがいる!!
東北の皆さん、本当におめでとう。今年の夏の映像は、これから先、東北にどんなことが起ころうと、勇気を思い出させてくれるでしょう。
仙台育英の選手諸君、君らが手にしたものがどんなに価値が大きいものだったか、生涯を通して理解していくことになるでしょう。
2022年の夏は、まさに東北のものとなりました。