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B級マニアが岩井俊二監督作品を語る その2 「リップヴァンウィンクルの花嫁」を語る

 「岩井俊二監督作品を語る」と予告して3週間以上が経過。

 

 ついに語る日がやってきました。いや本当に年末は忙しかったんだって!!

 

 さて、クドイほど繰り返しますが、管理人のキロポストはその多感な思春期において、B級映画をたくさん見てきました。日曜の午後にやっている、名も知らない俳優ばかりが出ているチープなストーリーのB級映画です。基本的に「練られた脚本」「センスのあるカメラワーク」「大胆な構図」「レベルの高い演技力」などを映画に求めていません。あくまでも自分にとって映画は時間つぶしの娯楽の一種です。質の高い映画評を見たい方は他のサイトをご覧ください。

 また実生活でも鉄道マニア、歴史好き、と「他人に最も敬遠される趣味ベスト10」に必ずランキングされる分野を実践しています。

 皆さんにくれぐれも忠告しておきますが、鉄道マニア、歴史マニアは話が長いくせに他人の話は必死に遮る傾向がありますので、近づかないようにした方がいいです。

 

 ともかく、趣味・実生活のみならず、青春期も「B級」な日々を送ってきたので、「オシャレ」「さわやか」「カッコイイ!」という言葉とは対極の位置で生きてきた次第。

 

 そんな自分が「雰囲気がオシャレ」「感性が高い」とされる岩井俊二氏の作品を見ると、どういう結果になるか。このブログで語っていこうと思います。

 

 

 最初に鑑賞したのは「リップヴァンウィンクルの花嫁」です。2016年3月に公開された、岩井監督の現時点での最新作。2018年に中国国内で公開された作品も作っているらしいけど、情報がないので詳しい言及は避けます。

 

 しかしこの作品はタイトルからして、なんだかオシャレですね。

 

 「リップヴァンウィンクル」ですよ!?

 

 「バ」じゃなくて「ヴァ」ですからね。なんかビレッジヴァンガードみたいで感度が高いですね!

 

 ちなみにこの「リップヴァンウィンクル」を調べてみると、Wikiによると19世紀のアメリカの小説家であるワシントン・アーヴィング1820年に発表した短編小説集の中の一篇のタイトルなんだそうです。

 その原作者アーヴィングの「リップ・ヴァン・ウィンクル」の内容は、いつも妻にガミガミと怒鳴られていた木こりのリップ・ヴァン・ウィンクルが猟をしに森の奥深くに行くと老人たちに出会い、酒盛りして寝てしまった。起きて街に戻ると、なんと20年も過ぎていて知り合いはみんな年老いており、怖い妻は病死していた。彼は怖い妻から解放された!というものとのこと。

 

 なんだか浦島太郎みたいですね。実際、最初に日本語に訳した森鴎外はこの作品に「新世界の浦島」というタイトルを付けた、とのこと。

 

 でも!この作品について調べてみたのですが、あるサイトにて、岩井監督自身が「いつもの散歩コースにある洋服店の名前だったから付けた。原作は意識していない」と話した(らしい)そうです。

 

 そんなオシャレな名前のお店が近所にある時点で、、やっぱり東京ってスゲーなあ、と思ってしまう。地元に昔、「パンドラの館」というラブホテル(今はなんていうの?)があったのを思い出しました。なんか「いかにも田舎!」というネーミングセンス。まあ、男女双方にとって「パンドラの箱」を開けるようなもの、ということですね!

 

 まあ、それは置いておき。

 

 この作品の公開が迫っていた時、CMがなんだか印象的でした。

 耳の付いた、顔面の上半分が完全に隠れる白い帽子?仮面?みたいな女性が出てきて、あっちこっちキョドリながら見ている。BGMにNOCCOが流れていました。

 

 これだけ。

 

 これでどんな内容か、想像つきます?自分は全然、わからなかった。

 でもなんだかとってもオシャレな感じがする!なんとなく、「これがわからないと感性が低いといわれる気がする」という不安感に襲われます。

 

 

 まあ、前置きが長くなりましたが、早速、見てみましょう。

 

 初めての岩井監督作品の鑑賞。きっとポップでオシャレなんだろうな、という期待は冒頭で粉砕されました。

 

 前半は、見ている側もひたすら辛い。「牡丹と薔薇」を見ているような感じになります。

 

 まず主人公の黒木華さんの演じる女性が、あまりにもか弱い。

 

 いやあ、いい人ではあるんだろうけど、人に気を使うことで疲弊していそう。確かに主人公が何をしたい人のか、わからない。

 

 で、恋人ができるのですが、ネットで知り合ったという男。

 

 職場での恋愛が、セクハラマナーの向上とともに禁忌となりつつある中、ネットでの出会いは増えていくと思われますが、それにしても確かに何かの「過程」が飛んでしまっているような気もします。

 

 その男と結婚式の話になるのですが、男の側が招待客が多いのに対し、主人公は親戚も友人も少ない。男は「何とかしろ」と迫る。

 

 よく考えれば、結婚式なんて最も「見栄」を張る儀式でもあるわけで。なんであんなに無理して出席者をかき集めなければならないんでしょうかね?自分は呼ぶような友人もいなかったので、海外で二人だけ挙式をしました。見栄にお金をかけるくらいなら、人生に一度の思い出作りにお金をかけるのもあり!!

 

 脇にそれましたが、彼女はなんと「友人代行」サービスで親戚や友人を調達してしまう。

 

 なんか学生時代の自分を思い出してしまう(苦笑)。

 

 若い頃って、なんであんなに友人関係や数の多さにこだわるんでしょうかね?

 一人の方がよほど気楽でのんびりする、と考える自分の方が異常なのか?

 

 で、彼女は相手に調子を合わせるために嘘を重ねていくのですが、男の母親の策略もあり、ついに嘘がバレることとなり、すべてを取られて宛ても無い中、世間に放り出されることになります。

 

 ここまでの展開は、本当にひたすら辛かった。まず母親が憎らしいし、綾野剛もズル賢い。

 

 おいおい、岩井監督って、こんな嫁いびり作品ばかり作ってんの?と衝撃を受けました。全然、オシャレじゃないじゃないか!!

 

 でも、安心してください。ここから主人公の人生は変わっていくから。

 

 まず逃げるように止まった下町のビジネスホテルにて、泣きついて職を得て、とにかく休まる日々を手に入れます。

 いや、これだけでも安心したよ。旦那の母親がすべてを奪っていく勢いだったので。

 

 で、そこから綾野剛が(役目忘れたので俳優さんの名前で)、主人公に、今度は他人の結婚式の友達代行をするように提案。

 そこで知り合った「疑似家族」と意気投合して食事をする。

 

 このシーン、救われるよ。疑似かもしれないけど、ようやく笑顔で食事しているからね、主人公が。ここまで一気に辛い展開だったから。初めて「気を使わない相手」と対しているようでした。

 

 で、そのあと、特に仲良くなったCoccoと二件目に行って、オールでカラオケ。

 

 主人公のストレス発散になったと思うけど、見ている側も発散できました(笑)。

 

 しかし黒木華さんは、「僕たちの失敗」がうまいねえ!!本物そっくりのクオリティなので、一見の価値あり!!

 

 ようやく下り坂を転がり落ちるのが終わり、つかの間の安息を得た主人公ですが、この後、綾野剛が強引に拉致!彼はいつも邪魔をする!!

 

 主人公は軽井沢の豪邸に、家政婦として雇われることになりました。

 

 ここでもう一人の家政婦であるCoccoと共同生活を送ることになります。

 

 で、この共同生活が、前半と打って変わって、とても明るくて楽しいものとなりました。

 

 もうこの辺は全然、展開が違った。

 

 共同生活で生気を取り戻す主人公。

 

 その後、大きな事件が起こります。ここでは書かないでおきます。

 

 

 最後の場面では、すっかり表情を取り戻した主人公が、あるアパートで狭いながらも一室を得て新生活を始める情景が描かれていました。

 

 最初の時にはどこか自信なく、暗かった印象のあった主人公ですが、最終の場面ではそれはありませんでした。

 

 

 作品開始から前半まで、彼女からは「意志」が伝わってきませんでした。人に同調することを最優先にしてしまう傾向には、見ていてうんざりもしてしまいます。

 

 結婚式なんて、代行サービスを頼んでまでやらなければならないものですかね?

 

 でも、少し前、確かに世間では「空気を読む」ということが支配していた時期がありましたね。

 

 「空気を読めない人」は、容赦なく「発達障害」などと揶揄もされました。明らかに偏見ですが、「発達障害」という言葉が浸透した半面、それまで「変わった人」で済まされていた人の性格まで、「異常」か「異常じゃない」か、勝手に区別されるようになった気がします。「発達障害」は「異常か異常じゃないか」は関係ないです!これは新たな偏見なので、気を付けないといけない。

 

 とにかく、「空気が読めないヤツ」と言われたくなくて、過剰に周囲にあわさなければならない風潮がありました。

 

 前半の彼女はまさに、全力で空気を読もうとしていました。提示されることにただ従うだけ、直面する事態にただ流されるだけ。

 

 もっと自分で考えろ!と言いたくなるけど、果たしてどれくらいの人が「自分の意志」で生きていることやら。どこかで無理に合わせていることって、ありませんか?

 

 その後、主人公には「非日常」な体験が連続します。それも受け入れていた主人公ですが、徐々に自分の感情を表に出すようになったのが印象的。

 

 ちなみに、主人公とCoccoの「同性愛シーン」がありますが、「そっち方面」でもかなりなB級な自分ですが、なんと「いやらしく」感じなかった!おいおい、銀河鉄道999のメーテルの「そういうシーン」以来、作品中の「そういう表現」に注目してきたこの自分が、いやらしく感じないとは!

 

 やっぱり岩井監督の魔術に感化されてしまったのでしょうか?

 

 ひたすら悲惨なシーンが連続する前半と、徐々に安らぎが感じられる後半。

 あれだけ憎んだ旦那やその母親への逆襲シーンなどありません。

 最後では彼女がささやかな幸せを手に入れるだけ。

 

 スカッとするようなカタルシスはないけども、なんだか後味のよいスッキリ感で終えることができます。

 

 

 映像のセンスとかそういうのはわからないけど、面白かった、と感じました。自分は、ね。

 

 以上で岩井監督作品の感想の第一弾が終了。

 

 

 ところで、予告編のあのへんな帽子って、なんだったの?Coccoの歌も流れてこなかったし!!